「ゴミ」と聞くと、どんなイメージを持ちますか?


「捨てるのが面倒」や「分別が多くて大変」といった印象が浮かぶ方が多いかもしれません。確かに、ゴミ処理には時間や手間がかかり、時には自分で捨てに行くこともあります。しかし、ゴミには意外にも「無駄な費用」がかかっていることをご存知でしょうか?
日本のゴミ問題
環境省が発表した最新の「令和5年度一般廃棄物の排出及び処理状況等(推計値)」によると、日本のゴミ問題は依然として深刻な状況です。
- ごみ総排出量:約4,167万トン(依然として高い水準)
- 1人1日当たりのごみ排出量:約892グラム(わずかに減少傾向も依然として多い)
- 最終処分量:約391万トン(微減傾向)
- リサイクル率:約20.3%(横ばい傾向)
- ごみ焼却施設数:1,047施設(減少傾向)
出典:環境省HP「令和5年度一般廃棄物の排出及び処理状況等(推計値)について」
このデータからも、「ゴミの排出量が依然として多く、リサイクル率も伸び悩んでいる」という課題が明確に見て取れます。
年間2兆円超!ゴミ処理にかかる莫大な費用の内訳
私たちが支払う税金から、年間約2兆円を超える費用がゴミ処理全体に費やされています。これは、日本の国家予算の約2%に相当する額です。
家計に例えるなら、年収500万円の家庭が年間10万円をゴミ処理に費やしている計算になり、決して無視できない金額です。
ゴミ処理費用は、焼却やリサイクルといった直接的な処理だけでなく、以下のような付随費用も多額に上ります。
- 収集費用: 人件費、燃料費、車両維持費など
- 施設管理費用: 土地取得費、施設建設費、維持管理費など
環境省のデータによると、廃棄物処理事業経費の状況は以下の通りです(令和3年度)。
- ゴミ処理事業経費(費用総額):2兆885億円
- うち建設改良費(施設の改修費用など):4150億円
- 処理・管理維持費(施設の運営費用など):1兆5518億円
これらの費用を国民一人当たりに換算すると、1日あたり約40〜50円、年間約1万5千円となります。新生児を含む国民全体の税金で賄われていることを考えると、その負担の大きさを改めて認識する必要があります。
ゴミ削減がもたらす社会的・経済的効果
ゴミ削減の取り組みは、地域社会や経済に大きな利益をもたらします。ごみの削減が地域社会に与えるポジティブな影響を示す好例が、徳島県上勝町です。
徳島市から車で約1時間の山間部に位置する上勝町は、人口約1,500人の小さな町で、高齢化率が約50%を超える過疎地域でした。
徳島県上勝町では、ゴミゼロを目指して積極的な活動を行い、成果を上げています。この町では、ゼロ・ウェイスト(ゴミゼロ)宣言を発表し、現在のリサイクル率は驚異の約80%に達しています。目標は2030年に100%のリサイクルを実現することです。
上勝町では、ゴミ収集車を走らせず、住民が直接ゴミを搬入。徹底した分別とリサイクルが行われ、集積されたゴミが「資源」として地域経済に貢献しています。このような取り組みによって、無駄な支出の削減と、地域の収入増加が実現しました。ゴミ処理費用という支出を減らし、資源売却による収入を増やすことで、町に活気が戻りつつあるのです。
「ゴミ」を「資源」と捉える意識改革が、過疎の町を再生させるほどの大きな力を持つことを、上勝町は証明しています。
日本初の「ゼロウェイスト宣言」をした町:上勝町 https://zwtk.jp
ゴミ削減のための実践的な方法:「7つのR」
ゴミを削減し、無駄な費用を減らすためには、物の購入からゴミを減らす意識を持つことが重要です。「7つのR」は、物を減らし、次に活かすための方法を示しています。以下の7つのRを実践することで、ゴミを削減し、環境にも配慮した生活が実現できます。
Rental(レンタル)
物を購入するのではなく、必要な時だけ借りる。例:家電、衣類、工具など。
Refuse(リフューズ)
不要なものを断る。過剰な包装や無料サンプルを受け取らないなど。
Reduce(リデュース)
購入する量や物のサイズを減らす。消耗品を最小限にすることで、ゴミの発生を抑える。
Reuse(リユース)
使い捨てを避け、物を繰り返し使う。例えば、ガラス瓶を再利用したり、衣服をリフォームして長く使う。
Repair(リペア)
壊れたものを捨てるのではなく、修理して再利用する。例えば、壊れた家具や電化製品を修理する。
Refine(リファイン)
ゴミをきちんと分別することで、リサイクルしやすくする。正しい分別はリサイクル効率を大幅に向上させます。
Recycle(リサイクル)
リサイクル可能なものはしっかりとリサイクルに回す。紙、プラスチック、金属などを分別してリサイクルする。
買い物から始めるゴミ削減
最終的にゴミ削減は、物を購入する段階から始まっています。買い物の際に「本当に必要か?」「代わりのものはないか?」「レンタルできないか?」といった視点を持つことが大切です。7つのRを意識して選ぶことで、より良い消費習慣が身につき、無駄なゴミを削減できます。
例えば、購入したいものが本当に必要なのかを考え、代替手段を探すことで、結果的に廃棄費用を抑えることができます。このような心掛けを持つことで、無駄な支出を減らし、環境にも優しい生活を送ることができます。
まとめ
ゴミ削減は、無駄な費用を減らし、環境にも貢献する重要な取り組みです。私たちの生活において、物の購入から廃棄まで意識を持つことで、ゴミを減らし、無駄な支出を削減できます。「7つのR」を実践することで、ゴミ削減を実現し、より良い生活を手に入れましょう。
最も重要なことは、「ゴミ問題は、私たちが物を買う瞬間から始まっている」という認識を持つことです。形ある物はいつか壊れ、無に帰るという考え方を持ち、その「終わり」を意識して買い物をすることが大切です。
「本当に必要か?」「代用品はないか?」「レンタルで済ませられないか?」
買い物をする際に「7R」を意識することで、本当に価値のあるものと出会い、長く大切に使うことができます。その結果、無駄な廃棄が減り、ゴミ処理にかかる費用も削減され、私たちの生活も豊かになるという「好循環」が生まれます。
ゴミ問題は私たちの手の中にあります。少しずつ意識を変え、持続可能な社会の実現に貢献していきましょう。
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